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ひと雨毎に涼しさが増してゆく、早いものでもう秋分の日となった九月下旬の木曜日。厚い雨雲が覆う空は、摩天楼群の陰に隠れたダウンタウンの空のように暗く、雨が降っては止んでの日であった。
そんな今日も仕事が終わって外に出れば、雨そぼ降る祝日のそんな雨粒が、夏の風景を振り払い秋をいざなっていた午後8時過ぎだった。
博多一風堂の新ブランドのこちらで、人気も高くラーメンフリークや評論家の方々のブログサイトでも度々目にする店名である。行こう行こうと思っていながらも宿題にしていたラーメン店だった。
勤務先からほど近い場所もあって、今夜こそはと訪問する事にした。
慣れた銀座柳通りを歩いて、こちらが在る銀座ベルビア館のビルにやって来た。折り畳み傘をすぼめてエレベーターに乗車。扉が開いて左手を見ると、それっぽい入り口に進めば案の定こちらであった。
和風でありながらレトロ感の無いその内外装が、何処か銀座に似つかわしかった。落ち着いた雰囲気のそんな店内へ入って行くと、ひと言でいうなら良い意味でラーメン店らしくなかった。
券売機やカウンターの席が無い処なんかは、それを狙っているのだろう。テーブル席の一つに案内されてそこに腰かけ、ひと息つくとお絞りとメニューリスト等が目の前に置かれた。
あらかじめ店頭で決めていたキャベツ焦がし味噌とチャーシュー丼を、受け取ったメニューで指さしながらオーダーを済ませた。
さりげなく店内の雰囲気を確認していると、周辺の先客は殆どがグループ客で、リキュール等のアルコール片手に談笑する方々が大半で、大人の空間と言うシチュエーションであった。
2000年11月博多の地に「中華麺酒家五行」(2005年7月移転)として始まり、2003年6月西麻布、2004年12月京都、そして四店舗目の五行として2007年4月銀座ベルビア館のオープンと同時にスタートしたこちらだそう。
その後2008年6月代々木上原店がオープンして、五行五店舗体制が確立している。
その店名は陰陽五行に由来しているそうで、「火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生み、木は火を生む」とした五行相生のような事を指しているのだろうか。
江戸の昔から日本人が愉しんできた蕎麦屋の文化を、ラーメン屋という舞台で表現したらと言う発想のもと五行は生まれたそう。
「伝統を守り、新しい息吹を受け入れ、懐深い文化を築く世界の銀座に五行が新風を運ぶ」と言うキャッチもまた粋であった。程なく到着。
そのラーメンは黒いマー油で塞がれた味噌ラーメンで、深みのある黒い色合いが夜の銀座のネオンに照らされるのを待つかのように良いオーラが感じられるものだった。
それではと行かせて貰えば、さりげなくもこだわり抜いた質感の高い美味しさで、瑞々しい野菜を愛おしむような旨みに包まれた感覚が派生してゆくよう。
黒いスープから顔を出した中細の麺はまさしく蕎麦を見るようで、そんな面白みのあるラーメンを銀座で楽しめるのもまた素敵と言うしかなかった。
それはチャーシュー丼もまた然りの美味しさだった。そんなわけで、気がつけば完食の良さと言えた。
精算時に支払いを済ませていると私の何気ない仕草に、博物館でチケットを購入すると手渡されるパンフレットのようにこちらを紹介する小冊子を頂けた。
そしておもむろに近づいて来たお店の方が、さりげなく「いいオーダー選択ですね」と来たので、こちらもまたさりげなく「するどいですねえ」と返した。そんな風にして今日も、銀座の夜は更けて行った。
(左フォト) キャベツ焦がし味噌/チャーシュー丼/店舗入口 (2010.09.23)
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