祐天寺 来々軒 東京・祐天寺





透き通るように青い空から燦々と陽射しが注いでいた、まだ見ぬ雪化粧が容易に思い浮かべるほど今日も冷え込んだ、一月も中旬となって来たそんな休日の金曜日だった。唐突だがさすがラーメン評論家の中のラーメン評論家、大崎裕史氏である。

氏のブログによればなんと明治43年浅草の地に創業した来々軒で料理長を勤め上げた暖簾分けの来々軒が、今も祐天寺駅周辺で営業していると言う。以前にも触れたように浅草来々軒は、横浜税関職員だった浜松出身の尾崎貫一氏が開業させたもので、創業当時浅草本店だけでなくなんと上野にも支店があったと言うから驚きだ。

三代目が跡継ぎした頃太平洋戦争により昭和18年に閉店したものの昭和29年に東京駅周辺の八重洲で営業を再開。

その後昭和40年に神田駅南口周辺に移転したが、跡継ぎ不在により惜しまれながらも、三代目尾崎一郎氏を取材した内容が紹介される小菅桂子著「にっぽんラーメン物語」にもあるように昭和51年の1976年に完全閉店して行った。

千葉市稲毛区に居住していた三代目尾崎一郎氏宅の隣りに居住していた関係で、八重洲時代の来々軒で働いていた方が進来軒を開業させ現在も営業しており、数少ない元祖来々軒の味を継承するラーメンを提供している。

そんなわけで気になるところとなって、さっそく祐天寺の街へやって来た。祐天寺と言えば、大昔に鉄道ファンが営業するナイアガラと言うカレーショップを訪れたものだ。

こちらはそこからもそう遠くない、東口ロータリーから少し歩いた場所の赤いビルの中で営業していた。店頭には皆様に支えられて創業79周年と案内されたポスターが貼られていた。すると今年は80周年を迎える、アニバーサリーイヤーのこちらだ。入店すればそこは大変広い店内で、なるほど70席程度のテーブル席が整然と配されていた。

メニューリストから、雲呑麺とあるワンタンメンをオーダー。ビル2階と3階は店名こそ「上海会席慶興」と違うものの、こちらが経営する会席料理がメインの中華飯店だそう。

それにしても来々軒の料理長と言えば、尾崎貫一氏と共に東京醤油ラーメンを作り上げた方。こちらの創始者である傅興雷氏は、上野店の料理長の後に浅草本店の料理長に就任しているらしくその方の後継者のようだ。

当時日本蕎麦店で利用していた醤油を元に、それまで無かった醤油味のラーメンを作り上げたことが、代々こちらの中でも語り継がれて来たようだ。程なく到着。そのビジュアルはこうして目の当たりにすると、どこか進来軒のラーメンに通ずるオーラが感じられた。

それではと行かせて貰えば、長い長い歴史が刻まれている、そんなものをやはり感じさせる味わいがあった。比較的淡い味わいながら、芯のある面持ちがあった。気がつけば完食。

そのお孫さんとなる三代目店主長江基泰氏とお話しすることも出来て、そんなところもお聞きすることが出来た。1933年の昭和8年に大森で創業したこちらで、翌年に祐天寺のこの地へ移転したそう。そして昭和47年に現在のビルに建て替えて今日に至るそう。

こちらで修行して巣立った店主の来々軒が何軒かあったそうだが、今ではどこも閉店して行ったらしい。60年営業して2007年に閉店して行った四谷来々軒もそうした流れの店だそう。その四谷来々軒はなんと商標登録をした来々軒だそうで、こちらのように浅草来々軒と関係している店にその店名使用を了承したそうだ。

また古いアルバムをお願いして見せて頂いた。店内に置かれた白黒テレビが、その時代を語っている。創業者である傅興雷氏の肖像まで収めさせて頂けた。

時代が移り変わっても世の中には変わらない幾つもの文化遺産が存在しているが、こちらのラーメンもまたそんな受け継がれて来た大切な文化遺産と言えるだろう。

私は評論家でも何でも無いが、今回の訪問は一人のラーメン店研究家として大変意義のあるものだった。いや、かなりとても実に果てなくしみじみとしていて良かった。

(左フォト) 雲呑麺(ワンタンメン)/建替え前のフォト/店頭外観 (2013.01.11)


 中国料理 祐天寺 来々軒

 住所:東京都目黒区祐天寺2-3-13  TEL03-3712-2355 ※慶興TEL03-3713-8811

 定休日:火曜日  営業時間:11:30〜14:30/17:00〜22:00(21:30LO)

 アクセス:東急東横線祐天寺駅東口下車。駅前ロータリ中央奥から延伸する祐天寺ストリートを
       約80mほど歩いた左側にあり。



東急東横線祐天寺駅東口ロータリーから店舗が見える。

昭和八年創業、赤い三階建ての建物のこちら。

正真正銘の元祖東京ラーメンを提供しているこちら。

初代店主は浅草来々軒で料理長を歴任された方。

今年は創業80年を迎えるこちらの店内は広く明るい。

東急東横線で渋谷駅から祐天寺は七分で着く。