中華そば 漢珍亭 東京・荻窪 ※閉店





やや曇り空の大空ながら淡い陽射しが時折り注いでいて、冷え込みは緩やかに寒くなっている感のあった11月下旬の木曜日だった。

そんな今日も仕事が終わって、帰りの通勤電車に乗って荻窪で途中下車して外に出れば、秋が終わり間近と知らせるような、雨が降り出していた午後8時過ぎであった。

荻窪と言えば都内の中で一番多くの古参老舗ラーメン店がしのぎを削って営業している街で、そんな中でこちらへまだ訪問していなかったので訪れる事にした今夜であった。

あの丸長よりも一年早く開業した昭和22年創業の、旧店名を丸仁と名乗っていた戦後荻窪駅界隈のラーメン店最古参のこちらだ。

そんなわけで雨そぼ降る荻窪駅前だったが何しろ駅ビルから手が届きそうな距離にあるこちらのビルだけに、吉祥寺寄りの出口から出た事もあって一旦は傘を広げたが直ぐに閉じてビルとビルの狭間を歩いてこちらの入口にやって来た。

30年近く前の昭和56年に荻窪セブンタウンビルが竣工した際の駅前再開発で一度休業して、店名を新たにして現在の地に再開を果たしたこちらだそう。

荻窪駅周辺は今でこそ多くの人が行き交う街だが、戦前までは東京近郊の別荘地として西の鎌倉・東の荻窪と称されていた地域だったらしい。

しかし太平洋戦争が終結後に戦争で被災した多くの人が荻窪へ移り住むようになり、駅前には闇市から派生して誕生した荻窪新興商店街が昭和21年に出来て活気のある街となって行ったらしい。

そんな商店街があった場所も昭和50年代前半には、駅前再開発と言う波に押されて誕生したのが先述した荻窪セブンタウンビルだそう。現在ではそんな駅前には多くのラーメン店が営業しており、ラーメンの街荻窪として定着している。

そんな全ては戦前には無かった現象であり、そうした意味で今日のような荻窪と言う街は、戦後に生まれたと言っても過言ではない。

さて、階段を上がって行くとガラス戸の入り口があって、店名の下には丸い円の中に「仁」の一文字が入って古い屋号も著されていた。入店すると先客が二人おられて、それはもの静かな店内だった。

メニューが奥の壁面を利用して表示されていて、そこからワンタンメンを選んで大盛にして貰い、味付け玉子発祥のお店のこちらだそうで、そこはそれもお願いする事にした。

山梨県甲府市出身の往年の人気歌手、森進一氏がその昔の若い頃こちらでアルバイトしていた事があったそうで、厨房におられた店主らしき方にお聞きして見るとやはり先代の頃の話だそう。

それはごく僅かな一時期だけ、働いていた事があったらしい。昭和40年頃には歌手の登竜門的なテレビ番組に出演しており、その少し前の頃と言った処だろうか。程なく到着。

もうそれは何とも言えない佇まいのある中華そばで、如何にも戦後まもない創業らしい風合いのあるラーメンがやって来た。

それではと行かせて貰えば口にしてもその見解は微動だにしないもので、むしろ沸々と感じられる中華そば自体から来る力強さが新しい息吹さえ感じられるもの。

それは先代を越えずに先代以上の自身の店を守ると言う概念から生ずる気概であり、流通が豊かになった食材から生ずる英知でもあるもので、実に美味い中華そばと言えた。

醤油ダレが染み込んだホクホクの味付け玉子がこれまた美味しく、チャーシューやメンマが時ならぬ時代の傍観者となっていた程にきちんとしていた。

ワンタンがもう何この美味しさ?と言うもので、風合いのいい麺とスープ共々しみじみとその味わいを堪能させて貰った。大盛りの麺量もいい量ながら、気がつけば完食だった。いや、なかなか良かった。

(左フォト) ワンタンメン大盛+味付け玉子/ビル入口インフォ/店舗入口 (2010.11.25) 


 中華そば 漢珍亭

 住所:東京都杉並区上荻1-9-1慶仁ビル2F  TEL03-3392-8870

 定休日:火曜日  営業時間:11:30〜15:00/17:00〜21:30(21:00LO)

 アクセス:JR荻窪駅北口下車。階段を上がって外に出たら左手のビルとビルの間の道を入って程
       ない右手のビルに2階へ上がる入り口あり。



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