来集軒 埼玉・浦和西口







見知らぬ小粒な花々も咲くようになって、爽やかな青空から穏やかな陽射しが射し込み、春うららかなと形容するのが適切と言えた四月卯月上旬の休日金曜日だった。

浦和にも浅草に本家がある来集軒が営業しているとして、地元の本八幡にも営業しているだけにそこはもちろん気になっていた。

そんなわけで春の陽気に誘われながらも、本日もまた勤務先である浦和へやって来た。場所は浦和西口駅前コルソ裏手にある通りを50mほど進んだ左手に風情よく佇んでいた。

すぐ傍には「春の譜」と題された細野稔人作の彫刻があり、少女のタテ笛から春のメロディでも聴こえて来そうなほど周辺は春に彩られていた。

それが証拠に店先のグレーのプランターには、マーガレットの可憐な白い花が咲き乱れていた。

ふと見ると店舗右手には、サンプルが入った小型のショーケースが在った。さっそく入店して見ると店内はやや薄暗く、老舗喫茶店風の落ち着いたフロアーが広がっていた。

開店まもない時間もあって先客の誰も居ない店内で、店主もまた老舗喫茶店のマスターのような風貌で厨房におられた。

徐に店主の前のカウンター席に腰を下ろし、オーダーする前に少し世間話しを始めてから、メニューリストを手にとってワンタンメンをお願いした。

先代の父親から稼業を引き継いで営業している店主だそうで、いわゆるところの二代目となる店主のようだ。先代の父親は戦前は浅草で、飲食店を営んでおられたらしい。

しかし一家は戦況が厳しくなって、浦和のこの地に疎開して来られたのだそう。赤紙で先代は戦争に駆り出されたが、無事戦地から戻って来たそう。

浅草時代の飲食店時代におそらく来集軒の初代製麺所社長と交流があったのだろう、現在に至るこの来集軒を戦後まもない頃に開業したようだ。

そんな本家・来集軒製麺所は公式サイトによれば、創業明治43年の大変に歴史ある製麺所であるらしい。しかし戦後疎開先から浅草へ戻ると、戦火によって何もかもが奪われてしまったようだ。

それでも幸い稼働できる製麺機械を譲り受け、何とか製麺所の稼業を昭和23年に再開させたそう。そして昭和27年になってから、本家でも中華料理店を開業させたのだそう。

昭和28年から始まったNHK放送だが、いつ頃か不明だが浅草来集軒の中華料理部門が紹介されたことがあったそうで、その当時かなりの人気を博したようだ。

なお浦和のこちらはネットで調べると、昭和26年にはすでに開業しているらしい。

二代目店主によれば、先代が戦地でシュウマイの作り方を覚え、加須の来集軒店主にそれを教えたことがあるそうだ。

そんな情報を糸口に考えれば店主ご自身は判らないそうだが、こちらの開業はもしかしたら昭和25年前後ころと言ったところだろうか?

開業当時はここではなく、浦和駅東口周辺に店を構えていたそう。40年くらい前と言うから昭和48年頃にとある事情から現在のこの場所に移転して来たのだそう。程なく到着。

オーダーしたワンタンメンは、木製の四角いお盆に乗せられてやって来た。それではと行かせて貰えば、鶏ガラに魚介が軽く香る、その淡い味わいが実に素晴らしい醤油ラーメン。

豚骨はいっさい使っていない醤油スープだそう。ゴマ油がごくわずかに感じて何かと思ったが、メンマのに軽く和えるのに利用しているらしい。

全体的に豚の背脂がラードの変わりに使われている感じで、お聞きするとチャーシューを煮出して出た脂だそうで、なるほどその成分は変わらないものと言えた。

それにしても実に丁寧な仕事をしているワンタンメンで、チャーシューもかなり素敵で、タケノコが時代を感じさせて、ワンタンもなかなかの面持ちがあった。

麺は来集軒製麺所かと思いきや親しい製麺所があったのでつい最近までそこと取引していたそう。

しかし最近になって廃業してしまい、現在は珍来製麺所を利用しているらしい。これが中細で縮れていてこれも良い風情だった。

ちなみに浅草の本家は随分前に一度だけ訪れようと店頭に立った私だが、何故かその日は臨時休業でそれ以来気が乗れなくなって縁がなかったと思い訪れていない。

時代はいつも素敵な店舗を雲に隠して、ある日突然霧が晴れたかのように目の前に姿を現わす。気がつけば完食。

来集軒は他にも首都圏に多く点在しており、機会があれば他の来集軒にも足を運びたいものだ。いや、かなりとんでもなく実に素晴らしい、果てなく良かったこちらのワンタンメンだった。


(左フォト) ワンタンメン/メニュー/店頭/店舗外観 (2013.04.05)※2013/4/28内容修正


 来集軒@浦和

 住所:埼玉県さいたま市浦和区高砂2-6-16  TEL048-822-1877

 定休日:水曜日  営業時間:11:30〜15:30

 アクセス:JR京浜東北線ほか浦和駅西口下車。浦和コルソ中央の連絡通路で裏手に出て、その目
       の前の浦和さくら草通りを50mほど歩いた左側にあり。



浦和西口駅前コルソの裏手でひっそりと営業している。

店舗右手にサンプルが入った小型のショーケース。

すぐ近くには細野稔人作の彫刻があった。