キムラヤ 埼玉・北浦和西口







昨日まで降っていた雨の所為か桜の花の散りも早まったようで、風も出なかったこともあって木のすぐ下には桜花の絨毯が敷きつめられていた、新年度初日に相応しい光景を見ることが出来たそんな四月初日の月曜日。

今日も仕事が終わって外に出れば、予報通り気温もそう下がらずに過ごし易い気候の午後七時過ぎだった。

さすがラーメン激戦区の北浦和にあるからなのか老舗洋食店でも風情豊かなラーメンを提供しているこちららしい。ネットによればかなり昔から営業しているようで、洋食店もあってかメニューの中に何とトンカツを乗せたラーメンもあるらしい。

トンカツラーメンと言えば、岡山の老舗食堂では、昔からそれを提供しているようだ。言わば岡山のご当地ラーメンと言えて、もしやパン屋のような店名のこちらの初代店主は岡山出身なのだろうか?

そんなわけでしばらく前から気になるところなっていて、実は先日の土曜日も店頭に立ったが何故か閉まっており、リベンジとばかりに今回店頭へやって来た。

もうしばらくしたら閉店時間と言う時間で、ふと見るとお店の方が外に出て来て、シャッターの鉄製の平板状のガイドレールを所定の位置に差し込んでいるところだった。

今夜は何とぎりぎりアウトかと諦めかけたが、まだ営業を続けるらしくそれ以上のことをせずに中へ戻って行った。それならばと、お店の方の後を追うように店内へ入って行った。すると先客ゼロの静かなフロアが広がっていた。

陽が暮れた夜だからなのだろうか、まるでここだけ時間が昔から止まったような錯覚に陥るような感覚に襲われた自分がそこに居た。先ほどの方がおられて、奥の落ち着けそうなテーブル席へ促されそこに腰を下ろした。

トンカツラーメンを注文するつもりでやって来たが、数日前に半ラーメン付きの豚カツ定食を食べたことを思い出して、別にそれでなくてもいいかなとも思ったが、特にラーメンを絡めたセットメニューもなかったのでやはり初心貫徹と心が戻って結局830円のとんかつラーメンをお願いした。

こちらの歴史についてさり気なくお聞きすると、話し掛けた方はこちらの三代目らしく、こと細かに教えて頂きこちらでもまた大いに興味深いお話しを聞くことが出来た。

何と初代店主は、あのあんぱんで名高い銀座に総本店がある明治2年創業の木村屋で修行したパン職人だそうで、暖簾分けを許され晴れて昭和4年に東京十条の当時存在した陸軍関連施設周辺でパン屋を開業したのだそう。

しかし思うように儲からず数年で廃業。木村屋へ再度修行の道に戻り、昭和15年前後辺りに東京錦糸町で改めてパン屋を始め今度は順調に行ったそうだ。ところが時代は暗雲が垂れ込める世の中へと移行して行き、太平洋戦争の戦火を逃れるべくこの北浦和へ疎開して来たのだそう。

そして昭和20年いわゆる玉音放送が流れて終戦を迎え、その後昭和25年に北浦和西口駅前にパン屋の屋号そのままの食堂を開業。昭和37年に現在の地に移転して現在に至るこちらなのだそう。やっぱり何はともあれ、こうして聞いて見るものである。

なるほど様々な洋食メニューだけでなく、ラーメンメニューも豊富にあるこちらで、ご飯物のところにはチキンライスやカレーライス等の洋食だけでなく、こちららしくチャーハンや玉子丼に親子丼もあった。

また創業時はパン屋だったとお聞きしたばかりだが、思わず納得のサンドイッチメニューがこれまた豊富に並ぶこちら。それもあってか喫茶店みたいに、ソフトドリンク類やアイスクリームもあった。

土曜日に来たら閉まっていたことを言うと、出前の関係でやむなく早終いすることがあるそうで、その時もそれで早く閉店させたのだそう。程なく到着。なるほどカラッと揚がったトンカツが、自分が主役と言わんばかりにラーメンの真ん中に横たわるもの。

受験生らしき高校生が親から毎日カツ丼を出されて「もううんざりだ!」と先日電車の中で級友に訴えかける姿を偶然目にしたが、彼に較べればトンカツがそう経たない内に二枚食すなんて可愛いものだ。

そう思いながらもそれではと口にして行けば、ラーメンは良き昭和と言う時代を語る生き証人とも言えそうなほど風情がかなり素敵な味わい。麺もまた中細ちぢれで良かった。

豚骨鶏がらの昔から連綿と伝わって来た支那そばと感じる半面、具材に乱切りした人参が一つ入っており何処か洋風的な面持ちも同時に感じられたラーメンだった。

トンカツもカツレツと呼びたくなるほど時代を感じさせる老舗洋食店のそれで、思わず昔に入った神田須田町の老舗洋食店のカツレツが心の中でオーバーラップしていた。

岡山で伝わるトンカツラーメンのことに触れると、岡山とは縁もゆかりも無いこちらの家系だそうで、30年ほどまえ銀行に勤める常連さんが是非ともラーメンの中にトンカツを入れたものを食したいとなって提供したのがきっかけでメニューに加えたのだそう。

もしかしたら転勤の多い銀行員だけに、その方こそ岡山出身の方かも知れない。気がつけば完食。精算しようかと腰を上げようとすると、ホットかアイスのコーヒーをサービスしてくれるそう。

それならばとアイスコーヒーをお願いすると、ブルボンのお菓子と自家製の黒砂糖で作ったオリジナルシロップが一緒に来て、アイスコーヒーにシロップを少しだけ投入し、それを嗜みながらさらに世間話しに花が咲いた店内となった。

いや、トンカツも風情良く美味しく、ラーメンもかなりとんでもなく実に素晴らしい味わいだった。


(左フォト) とんかつラーメン/サービスコーヒー/店頭外観/メニュー (2013.04.01)


 キムラヤ

 住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-11-16  TEL048-831-4015

 定休日:水曜日  営業時間:11:00〜20:00

 アクセス:JR京浜東北線北浦和駅西口下車。ロータリー左奥の斜めに進む道路を歩いて行き中山
       道である国道17号に出た場所の直ぐ前方の奥寄りにあり。



時が止まったような何処か昭和を感じる店内。

昭和4年に東京十条でパン屋として創業したこちら。

洋食メニューが一番豊富にあるこちらだ。