ウミガメ食堂 神奈川・センター南







青い煌めきが空へ広がるような青空となって、穏やかなそよ風がひとときの秋の深まりの旋律へいざなっていた、十一月霜月も下旬となったそんな休日の木曜日だった。

1918年に本牧の埠頭で創業した横浜山手地区で営業する老舗中華店・奇珍樓の三代目店主黄國明氏が、血縁関係のある方に店を譲り引退してもう三年になるらしい。

そう言えば一昨年の12月20日センター南駅周辺にその奇珍樓店主であった黄國明氏の息子さんである正剛氏がこちらをオープンさせている。言わば奇珍樓創業一族による新たなブランド展開と言える。

そろそろ色々と落ち着いた頃だろうと、落ち葉がそよ風に落ちて秋が深まるなか出掛けることにした。というわけで本日もまた横浜駅を降り立ち、昨夜も乗車した地下鉄のブルーラインに乗って、新横浜の先のセンター南駅で下車。

センター南駅やセンター北駅のセンターとはいったい何を意味するのか?以前からそれが気になっていたが、今回南の方の駅に降り立ったこともあってこれをすっきりさせようとネットで調べて見た。

すると港北ニュータウンの公共施設や公共機関が集結したタウンセンター地区を表すらしく、これでこの件に関してやっとすっきりすることが出来た。

若干方向を勘違いしてその間違いに気づいて、戻りながらもその店頭へやって来た。起伏のあるニュータウンの一画の建物の所為か、1階に在るものの階段を数段降りた右手に入口の扉があった。

さっそく入店すると比較的広いフロアは、正午過ぎの良い時間もあって大変盛況となっていた。その店内には中国小物類などは一切なく、どこか多国籍料理店風のフロアが広がっていた。

特に席を促されることもなかったので、厨房を囲むように配置されたカウンター席の角辺りが落ち着けそうだったのでそこへ腰を下ろした。メニューを広げるとタケノコワンタン麺なるメニューを見つけ、奇珍樓に縁の深い麺料理だろうとそれをお願いした。

一息ついて何気なく厨房で忙しく立ち回る方々を眺めると息子さんらしき姿を見かけ、以前に購入したムック本に映る黄國明氏に何処か面影を感じる方だった。

するとその奥に、もう一人の方がおられた。見るとなんと引退したはずの黄國明氏で、もう夢かまぼろしかと言うしかなかった。

思わず今日はこちらだけにするかとなって、少し遅れてからシューマイ三個とチャーシュー丼のセットを追加オーダーすることにした。

奥には製麺室が見えて、自家製麺を提供するこちら。そう言えば奇珍樓のレポートで触れていなかったが、当時はそちらも自家製麺であったものだ。

なおウミガメと言えば、日本のおとぎ話の浦島太郎も乗っている生物だけに親しみ易い店名と言えそう。

また直ぐそばにはサンマー麺の由来に関して記述された案内があり、それによれば戦争中に船員たちによって賄い用に持ち込まれたモヤシは戦後安価でボリュームのある食材として港湾関係者の間に広まったそう。

寒い港で働く人たちのために麺が冷めにくく体を温めるそんなモヤシをあんかけスタイルにした麺料理が考案されて行ったらしい。

生碼麺の「碼」とは埠頭のことでそんな港から生まれた麺と言う意味が綴られていた。なるほど中国語で埠頭を码头(mǎtou)と呼ぶ。

そこには記述されていなかったが、するとそんな埠頭で戦前に営業していた奇珍樓もまた生碼麺に対して深い縁があると言えるだろう。程なく到着。

先述した若き黄國明氏が映るムック本を実は本日持参していて、その本を眺めている内にオーダーしたタケノコワンタン麺などがやって来た。

若い女性従業員二人が立ち回るフロアだったが偶然にも引退した店主の奥様が来られたらしく、私のムック本をめざとく見つけて「あら?旦那の若い頃の写真だわ」とつぶやかれて思わずそこで話しが弾むところとなった。

諸般の事情により三年前に奇珍樓の経営を弟に譲って一度は引退したものの、息子さんが営業するこちらが軌道に乗って忙しくなったからだろうか、夫婦揃ってこちらを手伝っている日々なのだそう。

それではと行かせて貰えば、奇珍樓を彷彿とする大きいタケノコがゴロゴロと入り、風情の豊かな自家製の極細麺に奇珍樓のスープとはまた違った風合いのものだがこちらのスープもまたなかなか。

チャーシュー丼とシューマイも、またかなり絶大に素晴らしかった。タケノコもあってかボリュームの良いタケノコワンタン麺ながら気がつけば完食。

精算時に黄國明氏ともご挨拶とお話しが出来た。1965年から2010年の45年間勤め上げたその顔立ちは精悍だがどこか穏やかな面持ちもありその素晴らしい人間性がわずかなやり取りで理解できた。

向こうでは厨房が奥にあって見かけることさえままならなかったが、こちらでは混雑してなければ気軽にお話しさえも出来そう。

そちらを出て駅へ戻って行くと、前方にモザイクモール港北の観覧車が見えた。今年もクリスマスイルミネーションが始まったと言う。いや、かなり実にとっても果てなく良かった。

(左フォト) タケノコワンタン麺/セットチャーシュー丼/同シューマイ/区役所通り (2013.11.21)


 自家製中華そば ウミガメ食堂 - UMIGAME-SHOKUDO -

 住所:神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央24-12 ライオンズプラザ1階

 TEL045-508-9204  定休日:水曜日  営業時間:11:00~22:00LO

 アクセス:横浜市交通局ブルーラインのセンター南駅出入口3下車。前方の通りを右手に出て行き、
       その先にある都筑区役所警察署交差点を左折して区役所通りを300mほど歩いた左手の
       ビルの半地下で少し降りた1階にあり。徒歩およそ5分。



最寄り駅は横浜市交通局ブルーラインのセンター南駅。

横浜山手地区奇珍樓創業一族による新たなブランド店。

浦島太郎も乗ったウミガメだけに親しみ易い店名。

店内外とも中国色は皆無のどこか多国籍料理店風。

最後に中国茶が供され、お・も・て・な・し。

埠頭で生まれたから、よって生碼麺なのだそう。